会話の中で「塗り箸やアクセサリーなど、漆塗りの製品を扱っている」と話をすると「塗り箸の漆ってなんだかすぐはがれそう」とか「扱いが難しそう」と言われることがあります。
輪島、山中という二大漆器産地を有する石川県で生まれ、小さいころから自然に漆器や塗り箸に親しんできた私にとってはこの発言はちょっと意外でした。毎日使うものだからこそ丈夫な漆を塗って耐久性を高めているのですから。 伝統とは昔の人の知恵と工夫の積み重ね。歴史に磨かれて確かな技法だけが残った結果です。その伝統を忠実に守る職人さんが作ったお箸が簡単に駄目になったりするわけがないんです。
そこで、私が日々使っている「ふくろう蒔絵箸」を新品と比べて見ました。

左が新品のふくろう蒔絵箸、右が2005年10月に使い始めてちょうど3年間毎日使用したもの。文様は蒔絵の銀色の部分が落ちている以外は目立った損傷はありません。黒漆の表面には、細かい傷があり、光沢もややにぶくなっています。私は外食はあまりしないので、一日2~3食このお箸で食べています。洗うときも普通の洗剤でスポンジを使って洗っていて「丁寧」とは程遠い扱いなので、まあ当然でしょう。

同じお箸の先端部分です。一番痛みやすいところで、塗りの薄いお箸だとすぐボロボロになってしまいます。
左の新品に比べると右の使用中のお箸はさすがに先端部分の表面が少し荒れてきていますが、未だ光沢を保ち、漆もまったくはがれていません。
ご覧いただいたように、普通に毎日使って3年程度では、少なくとも実用上問題になるような漆のはがれや傷といったものは生じないことがわかっていただけたと思います。
